カンボジアにおける雇用と労働は、カンボジア憲法、労働法、行政規則、習慣法、

国際法などにより規定されています。

(規定は随時修正されることがありますのでご注意ください)

 

労働契約について

Q1 労働者を雇用した場合、雇用契約書は必要になりますか?

A1 労働法では口頭契約及び書面契約が認められてはいますが、実質的には書面での労働契約締結が強く推奨されています。

(詳細)
労働法第65条によれば、労働契約は書面か口頭のいずれかで結ばれるとされています。書面での契約は、地域の習慣に従って作成して署名することができ、必要であれば無料で登記が行えます。口頭での契約は、明確に定義されていないとしても、就業規則で決められた条件での雇用者と被雇用者との暗黙の合意であると見なされます。また、有期労働契約の場合は書面による契約であることを言及しています。

 

 

Q2 労働契約にはどのような形態がありますか?

A2 有期労働契約と無期労働契約があります。

(詳細)
労働法では、被雇用者の業務内容や勤務時間によって、労働契約の形態や労働契約終了に関してさまざまな規定をしています。第66 条によれば、だれもが期間限定、あるいは無限期で時間を基準に雇用されています。

 

 

Q3 有期労働契約とは何ですか?

A3 有期労働契約とは期間の定めのある労働契約のことであり、2年を超える期間の契約はできません。一般的に契約社員などがこれに該当します。

(詳細)
労働法第67条により規定され、有期労働契約とされるためには、労働契約を結ぶ際、以下の条件を満たさなければなりません。
 ① 書面による契約であること。(日雇い労働者、パートタイム労働者に関する例外あり)
 ② 2 年以内の契約であること。
 ③ 正確な契約開始日と終了日が契約書に記載されていること(例外規定あり)。

 

 

Q4 産休代替でアルバイトを雇用したいのですが契約終了日が未定です。その場合、どうなりますか?

A4 契約終了日を労働者へ知らせなくても良い場合があります

(詳細)
労働法第67条第3項によれば、契約開始日と終了日を特定の日と明記せずにそれらの期日を決める方法もあり、次のような場合には、労働者は正確な契約終了日を知らされなくても良いとしています。

① 一時休暇を取得した労働者の補充としての雇用の場合

② 季節労働

③ 突発的に発生した作業への雇用

④ 企業による不定期に生じる作業への雇用

日雇い、パートタイムでの労働契約など、日ごとや週ごとで賃金を受け取る短期間労働は、契約終了日を明記しなくてもよい有期労働契約であるとされる(第67条 第6項)。

 

 

Q5 有期労働契約は何回まで更新することができますか?

A5 何度でも更新することができますが、最長で2年を超えてはいけません。

(詳細)
労働法67条第2項によれば、更新した契約が2年を超えてしまった場合、その契約は無期労働契約とされます。

Q6 契約社員を契約期間満了で解雇することにしましたが、必要な手続きはありますか?

A6 契約終了日までに契約更新を行わないことを労働者へ通知しなければなりません。

(詳細)
有期労働契約の終了に関して、カンボジア王国労働法は、契約法の一般原則と少し異なり、被雇用者への雇用者による契約終了の通知義務を規定しています。有期労働契約に特定された終了日に関して、第73条第5項によれば、雇用者は、被雇用者に対して契約終了日までに契約更新を行わないことを通知しなければなりません。契約終了と更新を行わないことを通知することで、労働者に新たな就職先を探す時間を与えるものである。

 

 

Q7 労働契約を更新しないことを契約社員に通知しませんでしたが、どうなりますか?

A7 労働契約が自動更新されることになります。

(詳細)
労働法第73条第5項によれば、雇用者が規定どおりに通知を行わない場合、契約は最初の契約期間と等しい期間の契約で自動的に更新されるか、または、もとの有期労働契約とその後の更新された契約の合計期間が2年以上である場合、無限期間契約となります。必ず雇用主が、契約の更新を行わない旨を被雇用者に通知しなくてはなりません。

 

 

Q8 無期労働契約とは何ですか?

A8 無期労働契約とは契約時に意図的に、あるいは、意図せずに契約時や契約中に有期労働契約が無期労働契約に変更されることで結ばれる契約です。一般的には正社員、常用労働者などが該当します。

(詳細)
有期労働契約は、以下の3 つの条件により無限期間契約に変更されます。

① 有期労働契約が書面で結ばれておらず、無期労働契約となる場合(第67条第7項)

② 有期労働契約期間が2 年以上で結ばれており、無期労働契約となる場合(第67条第2項)

③ 2 年以内の有期労働契約が終了後も暗黙のうちに業務が引き続き行われ、契約が無期労働契約となる場合(第67条第8項)

なお、有期労働契約終了後に、無期労働契約に移行する場合、労働者の雇用年数は、両方の契約期間を含めます(第73条第7項)。

 

 

解雇規定について

Q9 どういう場合に有期労働契約を早期契約解除することができますか?

A9 早期契約解除の法的根拠について労働法第73条で規定しています。

(詳細)
有期労働契約は、契約に明記された終了日に終了します(前述の通知義務を怠った場合を除く)が、契約者のいずれかにより、有期労働契約終了日前に契約解除を決定することができます。労働法第73条では、早期契約解除の法的根拠について規定しています。一方の契約者がこうした法的根拠なしに契約解除することは契約違反であり、違反していない側が損害補償を受ける権利を持ちます。
第73条により規定された早期契約解除の法的根拠とは、次の3つです。

① 両者が早期契約解除に合意した場合。

② 契約者のいずれかによる深刻な不正があった場合。

③ 不可抗力による場合。

 

 

Q10 有期労働契約で雇用主と労働者が早期契約解除に合意しました。必要な手続きを教えてください。

A10 書面での合意が必要で、労働監査官が証人となり両者により署名が必要です。

(詳細)
雇用者及び被雇用者の双方が合意すれば、契約終了日前に契約を解除することができ、契約解除により損害が生じた場合でも、損害を補償する必要はありません。この場合は、書面での合意が必要で、労働監査官が証人となり両者により署名されなければならない。(第73条第1項)

 

 

Q11 有期労働契約を早期契約解除できる重大な過失にはどのようなものがありますか?

A11 雇用者側の重大な過失の例について労働法第83条で規定しています。

(詳細)
雇用者又は被雇用者のいずれかに重大な過失があった場合、有期労働契約を解除することができます。過失がなかった側は、法的に契約解除することが認められます。過失をおかした側は、契約不履行に対する損害を補償しなければなりません。
雇用者側の重大な過失の例を次のように規定しています。

① 被雇用者が理解すれば契約しないだろうと考えられる状況で、契約書に署名するようにそそのかすための詐欺的な行為

② 賃金の全部もしくは一部の支払い拒否

③ 繰り返される賃金支払いの遅れ

④ 暴言、脅迫、暴力、暴行

⑤ 労働者に十分な作業を提供できないこと

⑥ 法律で要求されている職場での安全衛生措置の欠如

労働者側には、以下の重大な過失事例があります。

① 窃盗、横領、着服

② 採用時や雇用期間中の詐欺行為(例えば、偽の身分証明の提示、労働妨害、労働契約履行拒否、機密漏えいなど)

③ 規律や、安全衛生に関する規則への重大な違反

④ 雇用者や他の労働者への脅迫、暴言、暴行

⑤ ほかの労働者が重大な違反をするよう扇動すること

⑥ 組織内での政治的活動、宣伝、デモ活動

 

 

Q12 有期労働契約を早期契約解除できる不可抗力とは何ですか?

A12 不可抗力とは、雇用者及び被雇用者のいずれもコントロールできない事象が発生することです。

(詳細)
不可抗力は有期労働契約の早期解除に法的に認められた理由の一つです。
不可抗力とは、雇用者及び被雇用者のいずれもコントロールできない事象が発生することです。雇用者は、以下の不可抗力が生じた場合、義務を果たす必要はありません。

① 公的機関による組織の閉鎖

② 長期にわたり業務再開ができないほどの物的破壊を引き起こす大災害(洪水、地震、戦争など)

③ 雇用者の死亡による組織閉鎖(この場合、被雇用者は、契約解除通知期間に等しい賃金の補償を受ける権利を有する)

また被雇用者は、以下の不可抗力が生じた場合、義務を果たす必要はないとされています。

① 慢性的な病気、精神疾患、身体障害(この場合も、雇用者は事前契約解除通知の義務を有する)

② 入獄

 

 

Q13 法的正当性がない場合で契約社員を解雇する場合、どのような補償が必要ですか?

A13 雇用者が事前通知なしで、もしくは事前通知期間を遵守せずに契約解除を望む場合は、雇用者は、被雇用者が契約期間中に受け取ることができる賃金とすべての形態の手当てを支払う義務があります。

(詳細)
被雇用者による重大な過失がなく、不可抗力でもない場合で、雇用者が契約満了前に契約解除を希望する場合、被雇用者は契約不履行に関する補償と損害賠償を求める権利を有します。法的正当性なしに被雇用者を解雇する場合、被雇用者は、(1)解雇に関わる賠償、(2)損害賠償、(3)事前通知に代わる補償を受ける権利を有します。

第89条では、雇用期間に基づき解雇された被雇用者に対して支払われる解雇の際の賠償額に関わるガイドラインを規定しています。

損害に関する第73条3項の規定によれば、先述の法的に正当な理由で被雇用者の希望により契約を満了以前に終了する場合、被雇用者は、少なくとも契約終了までに受け取ることができる報酬に等しい額を受け取ることができます。加えて、雇用者が事前通知なしで、もしくは事前通知期間を遵守せずに契約解除を望む場合は、雇用者は、被雇用者が契約期間中に受け取ることができる賃金とすべての形態の手当てを支払う義務があります(第77条)。

逆に、被雇用者が第73条第1項と第2項で規定された法的正当性なしに被雇用者の希望により契約解除を行う場合、雇用者は、生じる損害に匹敵する補償を行わなければなりません(第73条第4項)。

 

 

Q14 契約社員を解雇する場合でも退職金を支払う必要がありますか?

A14 労働協約で定めていない場合、退職金額は少なくとも契約期間中に支払われた賃金の5%としなければなりません。

(詳細)
労働法第73条第6項によれば、契約が終了した場合、雇用者は、契約期間と賃金に比例した退職金を支払わなければなりません。退職金の正確な額は、労働協約により定められます。労働協約で定められていない場合は、退職金額は、少なくとも契約期間中に支払われた賃金の5%としなければなりません。

 

 

Q15 どのような場合に正社員を解雇することができますか?

A15 契約解除の法的根拠について労働法第74条第2項で規定しています。

(詳細)
労働法第74条第2項には、雇用者が契約解除できる正当な理由が挙げられています。これらの理由は、仕事に対する労働者の技術や資質、労働者の素行や性格、事業体の活動規定に関するものでなくてはなりません。

 

 

Q16 正社員を解雇する場合、被雇用者への事前通知はいつまでに必要ですか?

A16 雇用期間により7 日間から3 カ月です

(詳細)
労働法第74条によれば、雇用者が無期労働契約の終了を望む場合、雇用者は正当な理由を持ち、事前通告期間を守らなければなりません。労働法第75条によると、事前通知の必要最低期間は、以下のとおりです。

① 雇用期間 6月未満     7 日間

② 雇用期間 6月~ 2年    15日間

③ 雇用期間 2年~ 5年    1ヶ月

④ 雇用期間 5年~10年    2ヶ月

⑤ 雇用期間10年~      3ヶ月

ただし、雇用者は、契約終了を望むものの事前通知期間を遵守できない場合、労働者に補償する義務があります。また、労働法第116条によれば、労働契約が終了した場合、賃金とすべての種類の補償については、労働終了後48 時間以内に支払いを行わなければならない。しかし、労働者が試用期間中である場合や重大な不正を行った場合、不可抗力が生じた場合は、雇用者は事前通知なしに契約を解除することができる。

 

 

Q17 労働者が試用期間中の場合、解雇の事前通知は必要ですか?

A17 必要ありません。

(参考)
A16を参照してください。

 

 


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